映画との音量バランスに着目した音声ガイド制作支援手法の提案
多くの人が映画鑑賞を楽しんでいる一方で,映画音声ガイド(AD)の普及率が低いため,視覚障害者は映画鑑賞を十分に楽しめていないのが現状です.AD制作コストを低減するために,肉声音声ガイドを合成音声技術で代替することに挑戦しています.開発した音声ガイド制作ソフト(左図) を用いて,初心者のAD制作実験を実施しました.初心者が参加することで制作コストは削減可能ですが,ADの品質は低下してしまいます.そこで,プロと初心者の音量設定の違いを定量化し(右図),改善策を検討しています.
聞き取りおよび印象に及ぼす映画音声ガイドの話速の検討
本研究では,視覚障害者の意見を音声ガイド制作により積極的に反映するために,音声とキーボード操作で映画の音声ガイドの話速を調整できるソフトを開発しました.視覚障害者にソフトを使ってもらい肉声音声(Human)と合成音声(Synthetic)それぞれについて最適と感じる話速を決定してもらいました.さらに,制作した音声ガイドを若年晴眼者が視聴し,10個の質問に0〜9の10段階(Average score)で評価を得ました.結果, 収録版の肉声音声ガイドと同一の話速にすると劣ってしまう合成の音声ガイドOriginalであっても,視覚障害者が選定した話速を用いることで(合成音声SOO,肉声音声HOO) 臨場感や没入感を有意に増幅させられることがわかりました.
合成音声の声質に注目した疲れにくい音声ガイドに関する研究
合成音声を聞いている時,違和感や不自然さを感じたことはないでしょうか?
現在,合成音質は短文であれば肉声との違いが分かりにくレベルになっています.しかし,映画音声ガイドなど長時間合成音声を聞く状況下では僅かな違和感や不自然さが疲れに繋がる可能性があります.
本研究では,合成音声を用いた音声ガイドの質を向上させるため,肉声と合成音声を用いて映画音声ガイドによる「疲労」や「耳の疲れ」を評価し,要因を調査しました.結果,特に「イントネーション」,「アクセント」,「間の取り方」の3要素の違和感や不自然さが指摘されました.右図は,肉声と合成音声でアクセントが異なる音声ガイドを周波数を用いて表しています.
今後,3要素に対応する音響特徴量を特定し自然な音声ガイド作成を目指します.
高質な田舎を実現するための植物生体電位における計測手法の検討
秋田県では2022年から県政運営の方針として,自県を「高質な田舎」とすることを目指しています.そこで,豊かな自然環境を生かしたデジタル技術の活用が求められています.
本研究では,周囲の環境要因によって変化する植物の生体電位に着目し,植物の生体情報を可視化することを目的としています.
図のように,植物の葉上に電極を設置し,様々な条件下で生体電位を計測しました.結果として,測定開始時は生体電位が低く,時間経過によって徐々に安定値まで上昇する個体が多かったものの,例外もありました.
今後は,追加実験をすることでより詳細な解析をしていく予定です.