ハイパーサーミアの意義
我が国での主要死因の第一位はがんであり,毎年37万人の尊い命が失われている.
我々は,がんの治療法の1つであるハイパーサーミア(正常細胞とは異なるがん細胞の熱感受性[図1]を利用した治療法)に着目した.ハイパーサーミアは放射線療法,抗がん剤療法および手術療法と比べ副作用が少なく,これらの治療法と併用することで効果を増強させることができる.末期ガン患者がQOLの高い余生を過ごすための有望な手段として期待されている.
本研究では,感温磁性体(キュリー点*に到達すると磁性を失う磁性体[図2])微粒子を腫瘍部に注射し,体外から高周波磁場で誘導加熱することで悪性腫瘍を一定温度で加熱する磁気温熱療法を採用している.このキュリー点付近での磁場の変化を体表面に設置したピックアップコイルの誘導起電力として検知することで,目標治療温度に到達したか否かを検知するワイヤレス温度検知システムを開発した.
*本研究ではキュリー点を45℃に設定している.
図1 正常細胞とがん細胞の熱感受性の違い
図2 感温磁性体の特徴
ワイヤレス温度検知システムの概略図
ワイヤレス温度検知システムについて
① Drive coilに高周波電流(128~400kHz)を流し,高周波磁場を発生させる.
② Pickup coilを貫く磁束の変化を誘導起電力として検知する.
③ 誘導起電力をLock-in Amplifierで高周波磁場と同期検波し,LabVIEWで自動計測する.
LabVIEWについて
LabVIEWは,各種計測機器からデータを取得・解析・表示するソフトウェアを作成するためのプログラミング言語である.LabVIEWが利用される分野は,電子機器や半導体,自動車,通信,化学薬品産業など多岐にわたる.また,産業界だけでなく,教育研究分野においても多くの研究所や大学で採用されている.
LabVIEWは,視覚的な操作で作業ができるプログラミング言語である.初心者でも扱いやすく,あたかもお絵描きをするような感覚で容易にプログラムを組める.
図3 プログラムの例(左),実行結果(右)