視線計測可能なHMDとVR環境を用いたドライビングシミュレータ
高齢者と脳疾患罹患後の回復過程にある患者を対象とした運転能力検査技術を研究開発している.
運転再開支援や免許返納のための定量的な評価指標の構築をめざしている.
片側一車線直線道路を約60km/hで走行中に左右から歩行者が飛び出してくるシナリオを作成.歩行者との衝突の有無,視線,ブレーキに要した時間,頭部の動き等を解析し,運転能力を評価する.
自転車シミュレータ
VR 技術と磁気式モーションキャプチャ技術,各種センサを組み合わせ, 「現実の視程に合せた仮想交通環境の遠景を提示し,運転者が足下付近の路面を視認でき, ブレーキによる制動が可能な自転車運転シミュレータ」を開発した.
自転車乗用中の交通事故に共通するリスク要因の顕在化をめざしている.
歩行環境シミュレータ
交通事故状態別死者数では歩行中が最も高い割合を占める.そのうち,7割が車道横断中に亡くなっている.歩車間交通事故の防止には,ドライバー側からの事故防止のアプローチに加え,歩行者側の安全な車道横断行動の修得が有効と考える.
本研究ではHMDを用いて仮想空間を実歩行可能な「装着型歩行環境シミュレータ」を開発し,車道横断中の危険を疑似体験可能にすると共に,仮想交通環境における歩行者行動を計測することで,事故に遭いやすい歩行者行動を抽出することをめざしている.
仮想交通環境 検査の様子
映画との音量バランスに着目した音声ガイド制作支援手法の提案
多くの人が映画鑑賞を楽しんでいる一方で,映画音声ガイド(AD)の普及率が低いため,視覚障害者は映画鑑賞を十分に楽しめていないのが現状です.AD制作コストを低減するために,肉声音声ガイドを合成音声技術で代替することに挑戦しています.開発した音声ガイド制作ソフト(左図) を用いて,初心者のAD制作実験を実施しました.初心者が参加することで制作コストは削減可能ですが,ADの品質は低下してしまいます.そこで,プロと初心者の音量設定の違いを定量化し(右図),改善策を検討しています.
聞き取りおよび印象に及ぼす映画音声ガイドの話速の検討
本研究では,視覚障害者の意見を音声ガイド制作により積極的に反映するために,音声とキーボード操作で映画の音声ガイドの話速を調整できるソフトを開発しました.視覚障害者にソフトを使ってもらい肉声音声(Human)と合成音声(Synthetic)それぞれについて最適と感じる話速を決定してもらいました.さらに,制作した音声ガイドを若年晴眼者が視聴し,10個の質問に0〜9の10段階(Average score)で評価を得ました.結果, 収録版の肉声音声ガイドと同一の話速にすると劣ってしまう合成の音声ガイドOriginalであっても,視覚障害者が選定した話速を用いることで(合成音声SOO,肉声音声HOO) 臨場感や没入感を有意に増幅させられることがわかりました.
合成音声の声質に注目した疲れにくい音声ガイドに関する研究
合成音声を聞いている時,違和感や不自然さを感じたことはないでしょうか?
現在,合成音質は短文であれば肉声との違いが分かりにくレベルになっています.しかし,映画音声ガイドなど長時間合成音声を聞く状況下では僅かな違和感や不自然さが疲れに繋がる可能性があります.
本研究では,合成音声を用いた音声ガイドの質を向上させるため,肉声と合成音声を用いて映画音声ガイドによる「疲労」や「耳の疲れ」を評価し,要因を調査しました.結果,特に「イントネーション」,「アクセント」,「間の取り方」の3要素の違和感や不自然さが指摘されました.右図は,肉声と合成音声でアクセントが異なる音声ガイドを周波数を用いて表しています.
今後,3要素に対応する音響特徴量を特定し自然な音声ガイド作成を目指します.
高質な田舎を実現するための植物生体電位における計測手法の検討
秋田県では2022年から県政運営の方針として,自県を「高質な田舎」とすることを目指しています.そこで,豊かな自然環境を生かしたデジタル技術の活用が求められています.
本研究では,周囲の環境要因によって変化する植物の生体電位に着目し,植物の生体情報を可視化することを目的としています.
図のように,植物の葉上に電極を設置し,様々な条件下で生体電位を計測しました.結果として,測定開始時は生体電位が低く,時間経過によって徐々に安定値まで上昇する個体が多かったものの,例外もありました.
今後は,追加実験をすることでより詳細な解析をしていく予定です.
LiDARスキャナ搭載のiPadによる椅子立ちあがりにおける体幹・下膝前傾角度の解析
フレイルと呼ばれる運動機能などが著しく低下し,近い将来介護が必要になる状態の高齢者が増加している.
本研究では,図1の立ち上がり動作解析アプリによって得られた関節位置座標データから上・下半身に関わる体幹・下膝前傾角度を解析することで,フレイルの判断材料を発見することを目指している.
また,図2のようにクラスター分析したところ,体幹・下膝前傾角度の間には負の相関があることが分かった.
図1 立ち上がり動作解析アプリの一例
図2 クラスター分析の一例
高齢者の認知機能評価のためのタブレット端末を用いた巧緻動作の解析
高齢者の軽度認知障害を早期発見するために,タブレット端末で渦巻きを描画する.これによって,得られた描画時間や渦巻きのずれなどを解析している.
高齢者服薬支援のためのOpenPoseを用いた服薬動作解析システムの提案
現在,高齢者人口が増加しているのに伴い,高齢者を介護する介護職員や薬の管理をする薬剤師の数は年々減少している.これにより,自身でどの薬の飲んでいいかわからない人に対しての補助が十分にできないことが課題として挙げられる.
そこでOpenPoseと呼ばれる動作を可視化するアプリケーションを用いて服薬動作を解析し,高齢者の支援者なしでの服薬を目指している.
iPhoneを使用した認知症早期発見のためのアプリ開発
認知症は睡眠時間と1日の歩数が短く,少ない人が発症しやすいことが確認されている.そこから,1日の歩数,睡眠時間を記録し,認知症を早期発見するためのアプリを開発している.
1日の歩数が7500歩未満の人は認知症を発症しやすい.そのため,画像のように7500歩と比較し,どのくらい当日足りていないかをわかりやすく表示している.
超音波検査におけるプローブ操作のMR遠隔指示システムの開発と評価
遠隔医療支援の1つに,看護師が患者宅に訪問し,医師は病院から遠隔で診療する形態がある.その中で超音波検査を遠隔で実施する場合,医師はテレビ電話を通して口頭で看護師に指示する.しかしながら,超音波検査における超音波プローブの操作は,プローブの当てる位置や角度,当てる強さによって描出されるエコー画像が異なるため,専門性の高い操作が求められる.そのため,口頭での指示が困難である.
本研究は遠隔医療の要素技術として,看護師が遠隔地にいる専門医の超音波プローブの動きを模倣しながら超音波検査を可能にするためのMixed Reality技術を用いたプローブ操作指示システムの開発を目指す.
VR空間で触れるボードへの指による描画機能の評価
近年,VR技術を利用した教育が学習意欲や学習効率の向上に期待されている.そこで,実際に実空間のアクリルボードに触れながらVR空間に文字や図形を描画可能なタンジブル方式の手書き文字入力システムを開発した.一般的なタッチパネルは,触れることで内蔵されている電極間の静電容量に変化が発生し,接触判定を行う.一方で本システムは,磁気式モーションキャプチャ装置を使用して実空間のアクリル板および手指の位置姿勢を測定し,指とアクリルボードの接触を判定することによってVR空間のボードでの文字や図形の描画を実現した.
本研究では,実空間のタッチパネルとVR空間のボードとで漢字のなぞり書きによる比較実験を実施し,構築したシステムの文字入力機能の書きやすさを評価する.
頸椎後方固定術用VR訓練シミュレータの開発と評価
頸椎後方固定術は,脊椎の固定や変形の矯正のために,脊椎の一部である椎骨内の椎弓根に,スクリューを刺入し固定する手術である.しかし,椎弓根は細く,その周囲には動脈や脊髄など神経が多く存在しているため,術手術中に損傷しないようにスクリューの刺入には注意を必要とする.
本研究では,バーチャルリアリティ(VR)を活用し,ヘッドマウントディスプレイ(HMD)による奥行きのある視覚情報や力触覚装置により骨の感触を提示する.本番の手術に近い環境を構築し,研修医がスクリュー刺入作業やスクリュー刺入経路の計画作業を繰り返し訓練可能なシミュレータの開発を目指している.
技能継承のための力加減を伝達する視覚提示手法の考案と評価
人口の少子高齢化が進む中、中小製造業においては、人材の確保は年々難しくなっており,中小製造業において技能を持つ人材の確保が課題となっている.長年にわたって蓄積してきた技能は中小製造業の強みであり,技能人材の不足は中小製造業の存続を危うくしかねない.このような問題の解決策として、VR空間を用いて,保存された熟練の技術を模倣し,訓練することで,効率的な技能の習得を目指す学習法が考案されている.
本研究は技能継承において観察しがたい「力加減」に着目し,ハプティックデバイスを利用して,効率よくVR 環境上で視覚と触覚のフィードバックを活用した力加減の模倣が容易的かつ効率的に学習可能な訓練用VRシミュレータを開発する.
はんだ付け作業の訓練の様子