歩行環境シミュレータ
 

日本では交通事故の最大の犠牲者は高齢者,特に歩行中に事故に遭う高齢者が最も多く,未だ効果的な施策は得られていません.

 ドライブシミュレータは,ドライバーが事前に事故が発生しやすい状況を体験することで,危険予知能力を養ったり,パニックに陥らずに適切に車を操縦するための訓練装置として高い効果をあげています.我々が目指したのはドライブシミュレータの歩行者版.高齢歩行者が安全に車道横断を体験できるように,また,事故に遭いやすい高齢者のヒューマンファクタを明らかにするために,バーチャルリアリティ技術とモーションキャプチャ技術を利用した歩行者用の車道横断体験装置「歩行環境シミュレータ」を開発しました.

 このサイトでは,歩行環境シミュレータによる車道横断検査において事故に遭った高齢歩行者の特徴,事故を誘発しやすい環境条件,歩行者のモーションキャプチャデータ等を公開しています

高齢歩行者の交通事故を防止するためのアプローチ

書字動作の計測と解析

夕暮れ時の映像

手形キャンパスの夕暮れ

春の手形キャンパス

日中の映像

報道ステーション

秋の交通安全講習

NHK おはよう日本

ビジネスショウに出展

NHK ためしてガッテン

最新機種の映像

車道横断の計測風景(NHKによる取材)

(a) 年代別交通事故発生件数と発生場所

(b) 時間帯別交通事故発生件数と発生場所

今回の実験では片側1車線の見通しの良い直線道路を横断する条件で実施したが,交通事故に遭った被験者は全て高齢者であり,奥の車線(左から接近する車両)による接触事故の割合が高かった.時間帯別に調べると夕暮れ時以降に交通事故が多発する傾向が見て取れる.なお,夕暮れ時に手前の車線で発生した交通事故は無灯火の車両によるものであった.なお,高齢者の個人差は大きく,12回の車道横断で1回も事故に遭わない高齢者もいれば,複数回事故に遭う老人も存在した.高齢者自身が交通事故に遭いやすい潜在的なリスクを自覚し,意識することが,交通事故から身を守るための手段の一つである. 一見すると差がないように見える高齢者の「交通事故誘発リスクを定量的に検査する技術」の構築が本研究の課題である.

歩行環境シミュレータにおける車道横断時の交通事故発生状況
若年者と高齢者の車両視知覚率の比較
(車道横断時に任意の距離に出現した車両に気づくことができた割合)

(a) 若年者

(b) 高齢者

 片側1車線の仮想交通環境内において、被験者から左右20、40、60mの任意の距離にランダムな順番で車両を1台ずつ0.2秒間呈示し,出現した車両に気づくことができるかどうか,視野周辺部における検出能力を調べた.この能力が衰えると(何かに気を取られ安全確認が疎かになってしまった条件で),車両の接近に気づかずに車道に飛び出してしまい事故に遭うリスクが増加する.被験者には常に正面を注視してもらうため,中央スクリーンに点滅する指標を呈示し,検査が終了するまで点滅回数を数えるように教示し,昼,夕,夜の3種類の環境条件下で検査した.ここでは,7〜8名の被験者の平均で結果を示している.

 若年者はほとんど全ての車両に気付いているのに対し,高齢者は車両が離れるに従って見落としが大幅に増加(車両視知覚率が減少)している.この結果は,高齢者は安全確認をしないと,左右から来る車両に気づかずに車道に飛び出して事故に遭う危険性が高いことを示唆している.また,夜間に見落としが減少する理由としては,車両のヘッドライトの点灯により背景輝度に対するコントラストが高くなるためであり,車両の存在をより知覚しやすい条件になっているためと考える.また,若年者,高齢者共に左車両に比べて右車両の視知覚率が減少していることが分かる.これは,車両位置が被験者から等距離にあっても奥の車線に比べて手前の車線では車両が視野の周辺側に位置するためであり,視野周辺部ほど見落としやすいことが原因と考える.

頭部のMoCapデータによる再現映像